卒業後の進路
高校留学については卒業後の進路についても知っておく必要があります。ほとんどの人が大学へ進学しますが、その進学先は日本の大学と海外の大学とに分かれます。
帰国子女枠で日本の大学を目指す場合
高校留学卒業を活かす方法のひとつに帰国子女枠があります。帰国子女枠は外国の高校で、正規の教育課程に基づく教育を2年以上受けた者とされています。
ほとんどの大学が2年以上という条件ですが、1年や1年半で認める学校や逆に3年間という期間を求める大学もあります。しかし、ケースとしてはかなり少ないので、基本は2年以上と思って大丈夫です。
高校卒業後の帰国子女枠は、主に有名私立大学や有名国立大学で募集している帰国子女用の合格枠です。
帰国生入試とは?
海外就学経験者を対象に一般性とは別枠で実施される入試制度。海外就学を特別な学歴として評価する入試形式のため、一般入試に比べ合格しやすいといわれています。しかし、帰国生入試特有の問題等も多々あるため、事前の準備や対策は必ずしてください。
以下は一般的な試験項目と英語力証明の例です
試験項目
- 英語
- 小論文
- 面接など ※受験する学校によって異なります。
英語力証明
- TOEFL
- IELTS
- SAT、ACT(アメリカ)
- HSC、VCE、UAI(オーストラリア)
- NCEA(ニュージーランド)
- 州政府発行の証明書(カナダ)
- IB(国際バカロレア)
- TOEICや英検が有効な場合もあり
帰国子女枠で合格を勝ち取るために留学中に心がけておくこと
帰国子女枠で合格を勝ち取るためには、高校留学中にどれだけ帰国子女枠に必要な内容を理解して意識したかがキーポイントになります。
キーポイントは、以下の3つです。
- 希望の大学の選定
- 志望理由
- 選考条件
1.希望の大学の選定
まずは帰国生入試(帰国子女枠入試)を行っている大学を調べ、自分が行きたいと思える大学を選定しましょう。
以下は帰国生入試を行っている主な有名私立大学と国公立大学です。
帰国生入試を行っている私立大学(一例)
- 上智大学
- 慶応義塾大学
- 早稲田大学
- 立教大学
- 国際基督教大学
- 明治大学
- 同志社大学
- 法政大学
- 立命館アジア太平洋大学(APU)
- 中央大学など
帰国生入試を行っている国公立大学(一例)
- 東京大学
- 京都大学
- 大阪大学
- 一橋大学
- 横浜国立大学
- 東京外国語大学
- 筑波大学
- 東北大学
- 岡山大学
- 国際教養大学(AIU)など
ほかにも多くの大学が帰国生入試を行っていますので、自分が希望する大学を調べるところから始めてみましょう。
2.志望理由
面接ではその大学を志望した理由は必ず聞かれます。そして小論文のテーマによっては、そのつながりが関係する場合もあります。
いずれにしても明確な目的意識をもってその大学を選んだという理由が必要ですので、明確な志望理由を伝えられる大学を選ぶようにしてください。
3.選考条件
大学を選び、志望理由も固まったらその大学の選考条件をチェックしましょう。大学により選考条件や提出書類は異なりますので、選考条件によっては別の大学を選びなおす必要がでてくるかもしれません。
選考条件に英語力を証明するスコアや大学入試資格試験(または統一試験)は必須となります。英語力をつけるというのは大前提になりますが、英語力検定や試験は英語を話せればよいというものではなく、明確な対策が必要になります。
TOEFL / SAT攻略法、勉強法
前述した通り、大学へ提出する英語力検定のスコアや大学入試資格試験は数多くあり、志望する大学の選考条件によっても異なります。そのなかでもよく選考条件で英語力証明に使われるTOEFLとSATについてお伝えします
TOEFLとは
TOEFLとは、Test of English as a Foreign Languageの略で、英語を外国語として学習する人を対象として、大学や大学院などのアカデミックな場でのコミュニケーション能力を測るテストです。
TOEFLには団体向けのペーパーテストであるITPとオンライン試験のTOEFL iBTがありますが、帰国生試験でスコア提出を求められるのはTOEFL iBTのスコアです。
TOEFL iBTは試験時間は合計約3時間、1600点満点の試験です。
セクション | 問題数 | 制限時間 | 点数 |
---|---|---|---|
Reading | 30~40問 | 54~72分 | 0~30点 |
Listening | 28~39問 | 41~57分 | 0~30点 |
Speaking | 4課題 | 17分 | 0~30点 |
Writing | 2課題 | 50分 | 0~30点 |
TOEFL攻略法
TOEFLの攻略法としてはすべてのセクションで満点を目指さないことです。リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4つのセクションはそれぞれ30点満点で合計0点〜120点満点。
まんべんなく得点するよりも、得意なセクションで高得点を常にとれるようにし、苦手なセクションも極端に低いスコアにならないようにし、合計で基準をクリアすることが大事です。
TOEFLの勉強法
TOEFLの勉強法の3つの軸は「単語・過去問、公式問題反復・セクション対策」です。
TOEFLには頻出単語が決まっていて、その単語をとにかく暗記してください。そして過去問または公式問題集にトライしましょう。
十分に勉強してからとりかかろうとする人がいますが、練習なので低い点数をとっても大丈夫なのでとりあえず問題を解いてみてください。そうすることによって自分の立ち位置がわかり、自分の苦手な箇所がはっきりします。
苦手な箇所がわかったら、その箇所をセクションごとに分析して勉強しましょう。たとえばリスニングが苦手だった場合はシャドーイングという方法でリスニングを鍛えると効果的です。
SATとは
SATとはScholastic Assessment Testの略です。アメリカの大学に進学するための共通試験で、日本でいえば、センター試験にあたります。
SATにはSAT論理試験(SAT Reasoning Test)とSAT科目別試験(SAT Subject Test)の二種類が存在しますが、帰国生試験で求められるのはほとんどの場合SAT科目別試験(SAT Subject Test)のみです。
SATは試験時間は合計3時間、1600点満点の試験です。
セクション | 問題数 | 制限時間 | 点数 |
---|---|---|---|
English(Reading) | 52問 | 65分 | 200~800点 |
English(Writing & Language) | 42問 | 35分 | |
Math(計算機不可) | 20問 | 25分 | 200~800点 |
Math(計算機可) | 38問 | 55分 |
SAT攻略法
自分の目標を決めるためにもまずは過去問を解いてみてください。準備が不十分だから受けたくないという人もいるかもしれませんが、受けてみなければEnglishに重きを置くか、Mathに重きを置くか判断がつきません。
結果がでたら目指すべきスコアからEnglishで何点、Mathで何点を目指すかそれぞれの目標スコアを決めましょう。一般的には得意なセクションを伸ばすほうが楽に点数を挙げられます。
SAT勉強法
SATの勉強法でまず取り組むべきは頻出単語の暗記です。単語力をつけなければ次のステップに進めないと思い、とにかく単語力をつけましょう。
次はできる限り英語力がなくても大丈夫なセクションMathをしっかりやることで、一緒に英語力をつけることもできます。
そして、文法力が必要であるEnglish(Writing & Language)でさらに力をつけ、総合的な読解力が必要なEnglish(Reading)を勉強するという順番で勉強する方法をおすすめします。
勉強するおすすめの順番
①単語→②Math→③English(Writing & Language)→④English(Reading)
現地の大学を目指す場合
帰国子女枠で日本の大学を目指すのではなく、現地の大学入学を目指す場合もあるでしょう。その場合に心がけておくことと合格を勝ち取るためのポイントをお伝えします。
留学中に心がけておくこと、合格を勝ち取るために
これは日本の大学の帰国子女枠を狙う場合と同様になりますが、以下3つを高校留学のできるだけ早い段階で明確にするように心がけましょう。
現地大学を目指す場合に明確にすること
- どの国の大学を選ぶか
- 希望の大学の選定
- 志望理由
- 選考条件
現地以外の海外の大学を目指す場合(例:ニュージーランドの高校→アメリカの大学)
海外の大学を志望する場合は、「0.どの国の大学を選ぶか」というのも付け加えておきます。高校留学で滞在している国で大学進学を狙う場合は、学校や友人から情報が入りやすいですが、国を変える場合は制度や条件がガラっと変わります。
たとえばニュージーランドの高校を卒業し、アメリカの大学への進学を希望する場合は、誰に相談していいのか迷う場合もあるかもしれません。
現地の高校は留学生の受け入れに慣れているところが多く、海外の大学進学を希望する生徒も一定数いるため、現地の高校に在籍している進学カウンセラーに相談すれば解決するケースが多いです。
また、進路自体がなかなか決められない、という場合も、まずは現地の進学カウンセラーに相談してみましょう。
IB(国際バカロレア)
ここまで日本、海外の大学に入るための内容を伝えてきましたが、世界の大学入試に使えることで注目度が高まっているIB(インターナショナル・バカロレア;通称国際バカロレア)についても知っておいたほうが良いでしょう。
IB(国際バカロレア)とは?
International Baccalaureate(国際バカロレア)とは、世界中を転勤する家庭の子どもが、大学に進学できるように国際的に認められる資格を作ろう!という動きから1968年にジュネーブで発足した大学入学資格。
国際バカロレアは全人格教育として、目指す10の学習者像というのを明確にしています。
国際バカロレアが目指す10の学習者像
- 探究する人
- 知識のある人
- 考える人
- コミュニケーションができる人
- 信念を持つ人
- 心を開く人
- 思いやりがある人
- 挑戦する人
- バランスがとれた人
- 振り返りができる人
認定国は159ヶ国約5,400校に上り、日本も約170校の認定校があります。小学校に相当するPYP(初等教育)、中学校に相当するMYP(中等教育)、高校に相当するDP(ディプロマ)で、大学進学にはDPの資格試験合格が必要です。
IBに合格するため
IBDP(国際バカロレアディプロマ)を取得するには、自分が選択した6つの教科をIBのカリキュラムで2年間勉強する必要があり、試験は年2回(春と秋)に行われます。また、試験の他に論文提出、課外活動をしなければならないなど一定の条件があります。
IB試験の科目選択
教科グループ | 点数 |
---|---|
1. 母語で学ぶ文学 Studies in Languages and Literature |
7点×6教科=42点+ボーナス3点(※) 合計:45点満点 (※)ボーナス3点について EE、CAS、TOK それぞれ1点ずつ
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2.第二言語 Language Acquisition |
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3.人文社会系 Individuals and Societies |
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4.自然科学系 Science |
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5.数学 Mathematics |
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6.芸術 Arts |
上記の図のように、IBにはGroup 1 からGroup 6まで6つの教科グループがあります。IB生はそれぞれのグループから一つずつ科目を選択します。
IB試験の例外として、Group 6(芸術)の代わりに、Group 2(第二外国語)、 3(人文社会学)、 4(科学)の科目を選択することが可能です。もうひとつ例外として、バイリンガルの生徒はGroup 1(母国語)から2つ科目を選択することもできます。
6つの科目選択の他に、3つの「コア」という論文や課外活動があり、全員が履修・活動しなければいけません。 Extended Essay(EE)、Creativity Activity Service(CAS)、Theory of Knowledge(TOK)の3つで、各1点ずつボーナスポイントが与えられます。
IBDPの評価内訳は大きく2つ。
- 2年間のコースの中で提出したレポートの評価
- 世界共通で実施される最終試験の成績
最終試験の比重が高いため、最終試験により合否が大きく分かれるというのは日本の大学試験に似ている部分かもしれません。
IBの合格率
合格率は平均7〜8割程度。2020年以降は合格率が85パーセントを超えるところまで上がりましたが、これはコロナ禍で最終試験を実施できなかったため、見込み点数が最終点に換算されたもので、一時的なものと考えてよいでしょう。
(参照:IB-Diploma Programme statistical bulletin)
IBの魅力
IBはただの大学入試試験ではなく、それにチャレンジすることによって得られる多くの魅力があります。
IBの魅力①:世界の大学入学資格が得られる
IBの合格資格は世界中にある多くの大学の入学資格となります。試験の点数があれば海外の志望する進学先に複数出願することができ、希望の大学合格もぐっと近づきます。
IBの魅力②:世界に通用するリーダーシップ力が得られる
IBは全人格教育を掲げており、その過程において周りを巻き込みながら協力を得ていくリーダーシップ力が身につきます。
周りの小さなことから世界的なことまで様々なケースをチームの力でクリアする課題を与えられますので、その課題をクリアしていくなかで、世界中のどの国の人がいても関係なくリーダーシップを発揮できる力を身につけることができます。
IBの魅力③:論理的思考、探究心、プレゼン力など総合的な力が身につく
IBには10の学習者像があり、様々な指針が示されています。そのなかで自然に得られる力としては論理的思考、探究心、プレゼン力など多くの能力です。総合的な深い人間力が得られるというのは、IBの最大の魅力かもしれません。
IBのある学校を選択したほうが良いのか?
IBは世界的なエリート教育の代名詞といわれることもあり、日本を含む海外の多くの大学入学資格を得られることから、IBのある学校を選ぶというのは良い選択だと思います。
しかし、簡単に得られる資格ではなく、6科目ですべてを満遍なく得点がとれないと合格に届かないため、できる限り苦手な科目なく総合的に学んでいく必要があります。
そのため、IB資格合格を目指そう!と思ったら、頑張っていこうという覚悟を決めなければいけません。大学入学資格だけではなく、総合的な人間力やグローバルに通じる本当の実力も得られるため、簡単な道ではない分、これからの人生において得られるものも大きいのがIBです。